早稲田大学 後藤春彦研究室

第4回『吉阪隆正賞』授賞式/記念シンポジウム

 

第4回『吉阪隆正賞』授賞式/記念シンポジウムは下記のとおり行われました。

 


 

受賞者:黃聲遠+田中央工作群
    Huang Sheng-Yuan + Fieldoffice Architects

業 績:台湾・宜蘭における持続的かつコミュニケイティブな空間デザインの実践
    Practical, Sustainable, Communicative Design Activities in Yilan, Taiwan.

※黃聲遠+田中央工作群のプロフィールはこちらに掲載しています。

 

受賞理由:
『最近いつも想うこと。
 われわれが一緒に仕事をする仲間にこんなに恵まれているのは、
 何か要因があるはずだ。
 しかも、この「自発的建築学校」を自分たちの家にしてしまった。
 もしこの親密な空間が、無限の可能性を秘めるなら、
 人と人との間の親密さも、無限の可能性がある。
 青春、それはいつも幾重にも折り重なったランドスケープの中にある。』

ギャラリー・間の展覧会のカタログの最後に載せられたこの言葉ほど、黄聲遠(ホァン・シェン・ユェン)さんに何故この賞をもらっていただくかを能弁に語っているものはありません。みなさんがこの言葉の中に感じられたこと、それがそのまま受賞理由です。
彼がこの通りの活動をしていることは、事務所を訪れ見ればすぐに分かります。若者とともに食べ、飲み、語り合い、議論し、それが建物や構築物になってゆく。豊穣なイーランの自然のように、その過程で人も育っていく。ここではうらやましいほどに、建築が人を結びつける触媒となり、人が建築を作り上げる触媒になっています。
作業は共同体の中で育まれ、醸成され、具体的なものに置き換えられていきます。人間は不完全なものであり、それ故、他者を理解しようと努力し、他者を認め、助け合い、補い合い、その結果、たとえ完璧ではないとしても形に移していく。これは吉阪がことあるごとに不連続統一体として若者に語りかけていたことです。出来上がったものには当然のことながら、矛盾や様々な不協和音が混ざり込みます。でも、綺麗に整理されたものよりは不整合な豊かさを愛する姿勢、黄さんの眼差しは常にそこに注がれています。
こうした造り方や建築の在り方は、わが国のみならず近代社会ではすでに失われたものです。かつてのU研や吉阪研究室に漂っていた吉阪を中心とした強烈な人の磁場のようなものを、彼の活動は思い出させてくれます。ノスタルジックな気持ちで振り返るのではありません。グローバリゼーションの名を借りた資本主義が世界の隅々まで行き渡り、インターネットの情報網が地球を覆い尽くす世の中です。このような時代、黄さんのような姿勢の中にこそ建築と人との本質的な関係を蘇生させる手立てが潜んでいると信じます。ここに本当の意味で、建築という価値が生き生きと時代を生き延びる可能性を見ることが出来ます。
審査委員会は、現地に赴き、意義を議論し、生み出された作品を吟味し、黄聲遠さんと彼が運営する事務所である田中央工作群の一連の作品と活動が吉阪隆正賞にふさわしいものと判断しました。

第4回吉阪隆正賞審査委員長
内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

 

■日時 2017年11月27日(月) 18時00分~(17時30分開場)

■会場 早稲田大学 西早稲田キャンパス 57号館2階
    (地下鉄副都心線西早稲田駅徒歩0分、JR山手線・西武新宿線・地下鉄東西線高田馬場駅より徒歩15分)
    (会場地図:https://https://www.waseda.jp/top/access/nishiwaseda-campus

■プログラム

 全体進行:後藤春彦(都市計画家・早稲田大学教授)

 1)授賞式 (18時00分~18時30分)
   主催者挨拶/受賞理由 内藤廣(吉阪隆正賞選考委員長)
   受賞者挨拶      黃聲遠

 2)記念講演(18時30分~19時30分)
   講演者:黃聲遠

 3)記念シンポジウム(19時30分~20時30分)
   進行:中谷礼仁(第4回吉阪隆正賞選考委員/歴史家・早稲田大学教授)
   コメンテーター:内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
           北山恒(建築家・法政大学教授・横浜国立大学名誉教授)
           藤井敏信(国際開発学・東洋大学名誉教授)
           小野田泰明(建築家・東北大学大学院教授)
           (予定)

■主催 吉阪隆正賞実行委員会

■共催 早稲田都市計画フォーラム

■参加申し込み 不要

■入場料    無料

黄聲遠(ホァン・シェン・ユェン)プロフィール

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1963年台湾・台北生まれ、東海大学(台湾)建築学科を卒業後渡米、イェール大学で修士号(建築)を取得、1994年より宜蘭に移住、田中央建築事務所(フィールドオフィス・アーキテクツ)を設立。
建物を単体として評価するという一般的な考え方と違い、黄氏は建物を周辺のランドスケープと一体的に認識すべきであると考えている。その認識範囲は広く、まちの持続的経営戦略にまで至る。
そのため、彼の公共空間に対するコミットは非常に長期に渡る。そのプロセスでは、住民と行政の間で、望ましい環境像の共有が図られる。繰り返し行われる議論によって、コミュニティーのライフスタイルとランドスケープは少しずつ融合していく。そして、そのプロセスから生まれてきた公共性の感覚を広げていき、親しみのある・流動的なネットワークが構築される。
黄氏は環境認知、生態系などの観点から、宜蘭固有の風土を整理する。そして、なにげないコミュニティーの価値と背景を掘り起こすことによって、自由に、自主的な空間形成を促す。そのことで、徐々にその場所ならではの時間感覚とゲニウス・ロキまでも可視化させる。こうした信念及び彼の独特な計画手法は、多くの建築家・学生に刺激を与え続ける。彼らはその後自ら黄氏の仲間になることもある。こうして形成されたのが、もともと黄氏一人で初めた「田中央」という同盟である。彼らは、日常生活と環境の中から、建築と人の本質的な関係を探り続けている。

 

 

黃聲遠簡歷

黃聲遠,1963年生於台灣台北,台灣東海建築系建築學士,美國耶魯大學建築碩士。1994年起定居宜蘭,從土地及生活出發,創辦田中央建築事務所。
有別於建築師將建築視為獨立的美學物件的慣性,黃聲遠視建築與地景為一體,堅持建築不應是孤立的存在,而是更有包容性的城鄉永續經營策略。因此他長時間透過公共空間議題的投注介入,引導居民與決策者凝聚共同的環境願景,讓社區生活與環境地景漸漸縫合、融合,將公共性延伸、擴展、連結成一個友善的流動網絡。
黃聲遠從環境感知與自然系統的理解中,梳理出屬於宜蘭在地的風土人情,持續發掘日常性的鄰里價值脈絡,讓空間環境的形成創造,自在而自主,慢慢浮現出場所獨具的時間感與精神性。黃聲遠的創作理念以及其對創作過程的獨特見解,啟發了許多建築人,她/他們自願匯入,從黃聲遠的個人,逐漸發展為田中央,願意回歸生活和環境的從容節奏裡,找尋建築與人緊密連結的本質。

 


 

田中央(フィールドオフィス・アーキテクツ)プロフィール

田中央は、プロである前に住民であるべきという信念を持つ。そのため彼らはまず、生活・仕事の場として、台湾の東北に位置する田園地帯「宜蘭」に住み着いた。宜蘭は言葉では表現しきれない魅力を持ち、彼らはその魅力に触発され、常識とかの束縛を破っていくことで、自分達の生活から「作る」という行為そのものを理解しようとしている。
彼ら一人一人が持つ空間に対するイメージは、藤の蔓のように宜蘭の隅々まで行き渡る。彼らは、未来への想像をふくらませるために、特定の空間を対象とせず、すぐに答えを見つけようともしない。常に必要な栄養素を補給しつづけることで、空間に対するアイデアには豊かな多様性が生まれる。
現地のリアルなライフスタイルと暗黙知を深く理解するために、田中央は主に大きなスケールの手作り模型を用いて、調査・計画を進める。そのプロセスは葛藤を多く抱え、時には妥協、他人との協調も必要である。しかしこのようなプロセスは、変動し続ける環境、利用者像に対応するために必要である。
デザインは、建築が計画、そして竣工した時点で終了するのではない。建築を利用し続ける人間がいる限り、デザインも常に現在進行形でなければならない。

 

 

田中央簡歷

田中央,堅持先成為居民然後才會是專業者。選擇在台灣東北方的田園城市—宜蘭,作為生活和工作的基地,因為那裡有一股難言的悸動,支撐他們擺脫所有束縛,放心的從自己的生活起航、探索創作。
他們的空間想像如藤蔓莖脈,匐爬於宜蘭小鎮與鄉野,沒有必然的主要空間,也不必急著用現在的答案來限定未來的發展;只要提供足夠的養分,想像力就可以不停蔓延、連結、開放,長出不同的枝節,拓展出更多的空間契機。
田中央以大尺度手作模型study為主進行創作活動,想透過徹底深入的真實生活,讓自己與在地的脈動融為一體。這種空間創造的方式勢必有著無數次的掙扎、合作與妥協,但唯有此才能讓建築創作與不斷變動的環境、使用性等因素之間生成綿密、無須以言語傳達的關聯。對田中央而言,設計主要不在建築的興建,也不在建築完成後結束,他們認為建築在使用後,設計仍然進行,因為生活(或使用)是活的,是永遠的進行式!

 


 

過去5年間の受賞歴(年度 , 賞 , 作品 , 場所)

2017 , 台湾/FAR EASTERN ARCHITECTURAL DESIGN AWARD 2017(遠東建築賞 2017) デザインエクセレンス賞 , 雲門劇場 , 新北市淡水区
2016 , Taiwan Architecture Award(台湾建築賞)台湾建築佳作賞 , 雲門劇場 , 新北市淡水区
2014 , FAR EASTERN ARCHITECTURAL DESIGN AWARD(遠東建築賞)デザインエクセレンス賞 , 羅東文化工場 , 宜蘭県羅東鎮
2013 , The LivCom Awards(国連リブコムアワード)Projects Buil(建築部門)金賞 , 宜蘭河維管束計画 , 宜蘭県宜蘭市
2012 , China Architecture Media Awards(中国建築メディア賞)最優秀建築賞 , 羅東文化工場 , 宜蘭県羅東鎮

 

 

近五年獲獎經歷(得獎年份 , 獎項名稱 , 得獎案名 , 案名所在地)

2017 , 遠東建築獎 台灣傑出獎 , 雲門劇場 , 新北淡水
2016 , 台灣建築獎 台灣建築佳作獎 , 雲門劇場 , 新北淡水
2014 , 遠東建築獎 台灣傑出獎 , 羅東文化工場 , 宜蘭羅東
2013 , 聯合國宜居城市競賽「建築組」金獎 第一名 , 宜蘭河維管束計畫 , 宜蘭市
2012 , 中國建築傳媒獎 最佳建築獎 , 羅東文化工場 , 宜蘭羅東

 


 

主要作品

雲門新家 , 2008−2015 , 新北市淡水区
櫻花陵園納骨廊+入口橋+ツーリストセンター+渭水が丘 , 2003−2015 , 宜蘭県礁渓郷
羅東文化工場 , 1994−2014 , 宜蘭県羅東鎮
維管束計画 宜蘭社会福祉センター+西堤屋橋緑道+津梅橋遊歩道+ディウディウダン森林+宜蘭水堀+宜蘭美術館 , 1995−2010 , 宜蘭県宜蘭市

 

 

重要作品

雲門新家 , 2008-2015 , 新北淡水
櫻花陵園納骨廊+入口橋+遊客中心+渭水之丘 , 2003−2015 , 宜蘭礁溪
羅東文化工場 , 1999-2014 , 宜蘭羅東
維管束計畫 宜蘭社福館+西堤屋橋河濱綠廊+津梅棧道+丟丟噹森林+宜蘭護城河+宜蘭美術館 , 1995-2010 , 宜蘭市

 


 

主要作品の写真
重要建築作品照片

 

櫻花陵園入口橋

櫻花陵園入口橋/2008/宜蘭礁溪
櫻花陵園入口橋・2008・宜蘭県礁渓郷

 

羅東文化工場

羅東文化工場/2014/宜蘭羅東
羅東文化工場・2014・宜蘭県羅東鎮

 

雲門劇場

雲門劇場/2015/新北淡水
雲門劇場・2015・新北市淡水区

 

宜蘭社福館

宜蘭社会福祉センター・2001・宜蘭県宜蘭市
宜蘭社福館/2001/宜蘭市

 

津梅棧道

津梅橋遊歩道・2008・宜蘭県宜蘭市
津梅棧道/2008/宜蘭市

 


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